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23分間の奇跡

23分間の奇跡
ジェームズ クラベル
23分間の奇跡
定価: ¥ 500
販売価格: ¥ 500
人気ランキング: 39178位
おすすめ度:
発売日: 1988-07
発売元: 集英社
発送可能時期: 通常4日間以内に発送

洗脳
 面白い.さらっと読める分量なのに,話をあえて分かりにくくしている所が良い.
 古いタイプの,型にはまった古い先生に取って代わる若くて魅力的な女の先生.彼女は子供達の様々な問いかけに誠実に答え,今まで疑問を許さなかった習慣にあえて疑問を抱かせる.斬新な方法で子供たちを啓蒙した素晴しい先生かと思わせておきながら,ラストでそれは覆される.
 これがアメリカの作家の書いた作品ならばきっと二人の先生を入れ替えて登場させただろう.その方が話がわかりやすいし.極めてハリウッド的な凡作となったことだろう.

やさしく見えてかなり難しい物語
 青島幸男氏も訳者あとがきで指摘しているように、恐らく、この物語は、子供が教
育によって簡単に洗脳されてしまうことの恐怖を述べているのと同時に、型にはまっ
た古い教育に対する批判的視点を含んでいると思いました。
 作者のあとがきを読むと、作者が物語を書いたのは、忠誠を誓うことの意味も教え
ずにフレーズだけ暗誦させられた娘の体験がきっかけとなっているとのことです。

 でも、この2つのテーマがなんとなくわかりにくい感じで書かれています。

 新しい先生の言っていることは、「制服」の話と、「わたしたちの指導者」の話以
外はほとんど、古い先生より教育としてより好ましいように思えます。一人一人の子
供たちの名前をちゃんと覚えるか否か、形式的に「忠誠を誓う」フレーズを覚えるだ
けか、その意味を考えさせるか、神に祈るということを疑ってみるか、それを許さな
いか、子供の質問に対して誠実に向き合って答えるかどうか...。作者の後書きを読
み、作者の願う教育を体現してるのは基本的に新しい先生(全体主義的なところは除
く)に思えました。それに、子供たちに健全な批判精神が育つのは、新しい先生の教
育においてではないでしょうか。

 でも、洗脳として扱われているのは...。

 もし、新しい先生のような教育をしていたところに、古い先生のような人がやって
きて23分間で子供を洗脳したなら、わかりやすかったと思いますが、逆の構成になっ
ているために、ともすると、新しい先生の教育が悪いもののように読み違われる可能
性もあるのかもしれません。

 なんだか、この小説は、かなり難しい構成になっていると思いました。

 作者が、わざと新しい先生と古い先生の教育内容を入れ換えた理由はなんなのでし
ょうか?洗脳の巧妙さを表現するために部分的に妥協してこういう構成にしたのか、
どんな教育理念も常に個々が自ら考え直していくべきだということなのか、作家とし
ての遊びなのか...。


洗脳の恐ろしさを短く強烈に訴えてくる一冊
本は短いが、感想は尽きない。おそらく第二次大戦下のドイツ軍の侵略下であろう、ある町の小学校に「制服をきた若い女の先生」が新しい教師として赴任してくる。先生は占領下の子供たちが占領軍に対して持つ疑問にひとつひとつ誠実に答え、よい大人になるにはどうすればよいかを子供たちの理論で教えていく。授業が始まって23分後、子供たちは全員「自分の両親はふるいのだ 新しい時代の良い大人になろう」と心から思うようになる。ある国を掌握したければまず幼い世代の教育からはじめよ、とよく聞くが、子供たちの無邪気で純粋な心を掌握していく過程が空恐ろしい。教育で世代を分断する恐ろしさを簡潔にやさしい文章でまとめた本。ぜひ多くの人に読んで欲しい。

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